鬼の美学と地域づくり

力丸 光雄

北上市「鬼の館」館長

東北大学理学部化学科卒業

ウィスコンシン大学院留学

元岩手医科大学教授

宮沢賢治学会代表理事

日本仮面研究会会長

北上市鬼の館協議会長


「山に邪しき神あり郊に姦しき鬼あり」―ヤマト人とって、原住のエミシは「征伐」すべき悪しき鬼であった。「東夷のなかに日高見国あり土地壌えて昿し撃ちてとるべし」―にこれが侵略者の「論理」である。蝦夷が、まさに猛々しい鬼になって立ち向かったのは当然である。  壮絶な「日高見三十八年戦争」の後、蝦夷が封じ込められたのは和賀川流域以北であり、一方、荒ぶる蝦夷は各地の散所に強制移住させられる。近世、南部領の一揆は和賀に始まり和賀に終る。蝦夷のエネルギーの爆発である。散所からは申楽が生まれる。蝦夷の文化の伏流水がユーゲニズムにつながったと思える。  安倍一族、平泉藤原氏、あるいは義経―亡ぼされたものの鎮魂・慰霊の「返閇」が鬼剣舞となり、この地に踊りつがれている。「あの高嶺鬼すむ誇り」(北上市民憲章)―をいかに地域づくりにつなげるか。岩手は未来の地である。