治山治水と風土工学

 

 竹林 征三

 工学博士・技術士

 富士常葉大学 環境防災学部 教授

 同大学付属 風土工学研究所 所長

 これからに“地域づくり”の実学として新たに「風土工学理論」の体系を構築し、

その普及啓発につとめている。

 



第一部 田上山砂防と瀬田川

“大津の宝”、“日本の宝”、“世界の宝”

1〕田上山の由来縁起

・湖国近江の風土記『近江與地志略』

・田上の郷・黒津庄四村、牧庄八村、

中杣庄六村

・大神山不動寺、不動明王の縁起

・智證大師・円珍

・「曇りなき、夕づく日をも、見つる哉、これ

神の山のしるしなるらむ」源俊頼 家集

 

 

 
2〕神の上・田上山の誕生物語

・巨晶花崗岩ペグマタイト・・・約8千万年前の

火山活動

・木内石亭(日本の鉱物学の草分け)

 螢谷の伽藍山公園

・ナウマン博士(独)多面体結晶の大研究と

和田惟四郎博士

・チンワルドの雲母・モナズ石、イットロタン

タル石、etc

・中沢晶洞

 

3〕瀬田川と琵琶湖

・「瀬田の唐橋」と風林火山

 ・瀬田川を制するもの琵琶湖を制す

・黒津八島・扇桃腺論

・田上山・一大美林

・大和信楽宮、藤原京等の造営

・瀬田川→淀川→巨椋池→木津川→大和の造営

・黒津八島(道万島、彦太郎島、かうとう島、

大島、高島、上の島、小島、しめの原島)

・瀬田川→淀川→巨椋池→木津川→大和の造営

・黒津八島(道万島、彦太郎島、かうとう島、大島、高島、上の島、小島、しめの原島)

・「河露の烟と見えて、立つなべに、波がかえる、室の八島に」

 

4〕田上山・山腹砂防にかけた先人の智慧と汗

@ヒメヤシャブシの発見者「西川作平」

Aハゲシバリの命名者「龍池藤兵衛」

 B緑山(あおやま)郡長と慕われた「松田宗寿」

C土砂留め役人、山の管理制度「河村瑞軒」

D山腹砂防、積苗工の発明者「市川義方」

E海面下の国オランダ人の目「デレーケ」の 砂防

「市川義方」と「デレーケ」の砂防論争

F鎧堰堤・オランダ堰堤の設計者「田辺義三郎」

G「田上の砂防さん」と呼ばれた井上清太郎

 

5〕忘勿・自然猛威

・明治29年、連続降雨1,900o湖北

・明治28年8月15日多羅尾災害   

 

6〕今昔物語からのメッセージに耳を傾ける

・「くごの瀬」“大海の鰐”と“湖国の鯉”

の戦い

・瀬田川「クリティカルポイント」大日山の

裾野“はかり石”と“龍王の岩”

 

 

第二部 治山・治水と風土工学

1〕環境から風土へ

人に個性があるように、地域にも強烈な個性がある。人にプライドがあるように、地域にもプライドがある。しかし、地域の個性は、しばしば隠れている場合が多い。また、地域のプライドは、しばしば傷つけられ泣いている。

感性を磨き、地域の歴史や風土・文化などをよく知れば、隠れているものが見えてくるし、プライドの悲痛な叫びが聞こえてくる。感性を磨けば磨くほど、地域の歴史や風土・文化を知れば知るほど、その度合いに応じて地域の個性がより輝いていることがわかるから不思議である。

 

 
2〕景観十年・風景百年・風土千年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3〕風土の誇り・四つの窓

 

 

四つの窓

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


4〕田上山・風土工学意味空間

1)田上山十六勝

2)田上砂防いろはカルタ

3)田上砂防・七賢人物語

4)田上山五訓物語

一.自然が劫の時をかけ大切に育て上げた我邦隋一の巨晶花筒岩の一大岩体であり、多様な鉱物の一大宝庫神のなせる芸術の山それが田上山なり

一.古の奈良の都の神社仏閣造営用材の供出、薪炭用としての乱伐、世の秩序の乱れ等により、全山禿げ山と化し山地崩壊土砂流出の源となりし悲しき歴史を秘める山 それが田上山なり

一.ひとたび荒れれば下流、宇治川、淀川、沿川は

洪水にみまわれ琵琶湖はあふれ沿岸は浸水す、

その因とも縁ともなりし、琵琶湖・淀川の防河

真髄要の山 それが田上山なり

一.一木一岩肌は緑復元に命をかけた先覚者達の英智の

結晶であり、この地に居を構えた先祖の汗涙の歴史

そのものであり、全山には地域愛という気が覆い、

大地に多くの先人の霊魂が宿る山

それが田上山なり

一.その存在は人為営力と大自然の営みとのかかわり

について後世に伝承していかなければならない、

大きな生きた教訓そのものであり、大津の宝、

日本の宝、いや世界の宝の山

それが田上山なり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5)湖南アルプス 田上山

七不思議発見・砂防七学びの“道”

@七曲り・泣き不動迎えの道

A笹間・矢筈八畳岩の道

B三代堰堤奇石岩峰、アルプスの道

Cみほとけ河原、宮川の道

D若女谷、鎧堰堤、阿弥陀河原の道

E本願谷・出合峠の道

F吉祥寺川・天狗岩、孫作の道

6)田上山砂防・大野外博物館

@植樹祭

A砂防国営公園構想

B第二東名高速道路

 

5〕“天変地異の世紀”と治山・治水

 (1)気候異変と治山治水

  ・地球温暖化でなく地球異変

  ・豪雨異変・四つの降雨異変

  ・異常気象とは

  ・“流行”と“不易”松尾芭蕉の心

2)“なまず三兄弟”と治山・治水

  ・関東大震災・東海地震・南海地震と

山地崩壊

  ・列島火山活動と富士山の噴火

3)21世紀“天変地異の世紀”への備え

 

6〕風土工学・意味空間の設計

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
7〕風土工学「知」「敬」「馴」の“こころ”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8〕夢のある“ふるさと”に向けて 

 

“夢の結実に向けて”夢のない人生はつまらない。
同じように、夢のない地域はつまらない。
このふるさとの風土にどれだけ夢を生み出す人がいるか。
夢を見つけ出す人がいるか。
それがこの地の将来の将来の明暗を分ける大きな指標の一つである。
智慧と熱き思いは夢を現実にする力を持っている。
智慧は夢の中で種子が生まれきて熱き思いの中で大きく育まれる。
個の発想よりは夢は生まれ、郡の想像にて夢の結実に向かう。
夢の実現に向けて、大切なことは熱き思いの過程であり、結果ではない。