富士山のイメージと地域特性

 

 冨田 陽子

昭和63年筑波大学卒。

建設省入省。

近畿地方建設局六甲砂防工事事務所、土木研究所、国土技術政策総合研究所を経て

平成14年より中部地方整備局

富士砂防事務所長。

 

 


1.富士山の山頂形状からみたイメージの地域特性

・地域に関わりなく直線のスロープで三峰のB形状が最も多く、次いで@形状がイメージとして持たれている。B形状は、全国的に見て、江戸時代中期以降に描かれている三峰(北斎、広重が描いた山頂)や富士曼茶羅図に強く印象付けされている結果と思われる。

・地元地域はC〜E形状(斜面は下に凸形状)を合わせた割合が少ない(約25%)のに対して、東京都、愛知県、大阪府の東海道沿線地域のC〜E形状を合わせた割合は35%40%程度ある。その原因として、東海道沿線地域の場合、イメージの基礎として前記に記した「浮世絵」に描かれたスロープの要因が考えられる。

図−1 山頂形状イメージ図

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


図−2 富士山頂形状イメージ分析結果

 

 

 

 

 

 

 


2.富士山麓の風土資産より連想されるイメージ構造

 キーワード(30個):富士五湖、逆さ富士、富士山の雪渓、御来光、湧水群、富士にかかる雲、ダイヤモンド富士、富士の浮世絵、浅間神社、御神火まつり、フジザクラ、竹取物語等の伝説、青木ヶ原の樹海、富士箱根伊豆国立公園、朝霧高原、富士の巻狩、曾我兄弟の仇討ち、活火山、風穴・氷穴、グランドキャニオン、十里木高原、宝永山、富士登山、富士講、大沢崩れ、八百八沢、御中道、富士登山駅伝、自衛隊富士演習場、洞窟人穴

 

 

図−3 

 

図−4 

 

  

 

図−5 

 

 

 

図−6 

 

 

図−7 

 

  

図−8 

 

 

 

図−9 

 

 


             表−1 地域別クラスター一覧表

地域区分

地 域

美しい自然

信仰

火山

高原

大地

活動

登山

地元

 

静岡県

 

 

 

山梨県

 

 

 

近郊

東京都

 

 

 

 

 

愛知県

 

 

 

遠隔

北海道

 

 

 

 

 

 

大阪府

 

 

 

 

 

 

 

 

広島県

 

 

 

 

 

 

 

・地元の場合「美しい自然、信仰、大地、活動」の4項目において共通点が見られるが、異なる点として静岡県の場合、富士山の南側に位置する「高原」をイメージし、山梨県は、北側に広がる樹海や穴に関する「陰」をイメージしている。

・近郊の東京都と愛知県の場合、観光目的で訪れる機会が多い山梨県でイメージされている「美しい自然、信仰、陰」で共通している。

・近郊地域の異なる点としては、東京都の場合、浅間神社と富士山の御神火まつり、富士講、御来光に関する「信仰」で連想が完結しているが、愛知県ではこれに「登山」まで連想が広がっている。また、愛知県の場合、観光、登山としての対象以外に、山、沢、火山としての「大地」のイメージも現れている。

・遠隔地域の場合、北海道と広島県で2つのクラスターが現れそのうち「火山」が共通している。この「火山」のクラスターの内訳は「富士登山、活火山、宝永山」であり、大阪府でもこのうちの2つに連想関係はみられる。これは、富士山ハザードマップの作成に関する全国的な情報発信が大きく影響していると思われる。言い換えると、遠隔地の場合、富士山=「火山」ということしかイメージできていない。

・大阪府の場合、クラスターが1つもなく、個々のキーワードは知っていてもそれらが繋がっていないことを示している。