これからの北海道の社会資本
丹保 憲仁
放送大学学長
北海道大学名誉教授。
元国際水協会(IWA)会長。元土木学会会長。
北海道大学工学部助教授、教授、工学部長、北海道大学総長
を経て現職。
1. 社会を支える環境の変化
●19世紀まで:移動速度と駆動エネルギーの極端な制約で、地域クローズド型の農業社会
●20世紀:石油の多用で高速大量輸送の普遍化で近代化が地球規模まで拡大し共有化される
●21世紀:地球の果てまで物を動かす近代化が、文明の普遍化大拡大でつまずき、今石油エネルギーの枯渇と水資源の乱用による不足が発生。石油の過剰使用による地球温暖化と水エネルギー不足で食料供給限界がみえ新たな文明が求められている。成長信仰の終焉。
2. 過剰人口日本の行き方:東京一極
●太平洋メガロポリスの極端な生産活動と雪崩のような(または、雪崩現象的)輸出による過剰人口の養育
●東京(加えて大阪・名古屋圏:東海道メガロポリス)と東京以外の日本の物心の大乖離
●東京の経済力突出と生活基盤要件欠損の超非対称。香港、シンガポール型空間
●教育、新幹線、飛行機、全て東京が基点で東海道メガロポリスの成長維持装置
●社会資本投資の優先度は工業と情報の生産。金は儲かるが食と住の貧困、非自然化、金儲け優先の歪の極大化
3.北海道のあり方
●東京の単なるサテライトとなることで、よりよい将来がありそうに無い。公務員給与等の地域格差の固定、北海道開発庁の廃止。道路交通法の画一施行のネガティブ面、農業の近代化(現代化)の縛り。
●日本の活動重心を単に支え、其の論理の中で生きていくだけでよいか。東京は異常空間である。異常空間が日本のGDPを支えている。
●東京には東京の特別な価値と風土がある。北海道はそれにシンクロナイズする理由は無い。風土が違う。
●食料自給率170%で日本ただひとつの食料自立可能圏。
●エネルギー的最弱圏:輸送・移動距離の相対的に大きなこと(札幌―函館、東京―大阪ともに3時間半であるが新幹線を意味ある形で持てるとする論拠に乏しい)、:6ヶ月の冬期暖房と春には要らなくなる巨大な雪の始末が必至。そのために他の地域に無い消費が要る。省エネ技術の産業としての基盤になる。水は十分にある。コンパクトな自立型の集落が考えられる。
●分散型地方集落では生産・文化・福祉をまかないきれずに崩壊が始まっている:札幌圏への集中が激しい。道庁などの行政管理機構や、老後の福祉を求めて。いずれも生産の中核ではない。
●地方都市の、生産・文化拠点化にかかわる基盤強化とネットワーク化がいる。いちいち札幌やまして東京までくる必要の無い強力な拠点化とその適切な地域への配置。
●札幌における大学院研究大学本部と地方拠点の研究組織化・研究所態勢の確立と地方文化・産業との一体化。関連して実業型学部・高等専門学校と拠点の一体化配置。高学歴女性の活動できる大きさと機能(複雑さと高度さ)を持った地方拠点集落(都市)をどう作るか。
●長距離交通はヒエラルキーをもうひとつ上げた事柄のみに使うようにし、自立性と自己完結性を高めた産業・生活拠点都市を作る。地方分権の基本的なもの。
●札幌圏は選択したかなり広い領域の活動を、大学院大学を核にして展開する。文理の学問の基礎を担う学部は大学院と一体化して札幌に置き、日本の中核的機能を果たすよう強化し全国化する。道内では大学組織をリンパ系にして血管神経系の行政経済組織と融合化して北海道島を日本の炎とする。
●スコットランドよりもデンマーク・フィンランドを好みたい。