■講演の報告
「清正の熊本城築城」
北野 隆(熊本大学工学部教授・建築学)
・熊本城の移築問題
次に、熊本大学名誉教授の北野隆氏が「清正の熊本城築城」と題して講演した。今回、山口県立文書館から見出した史料、絵図「九州諸城図」と「肥後熊本城略図」、文書「肥後国熊本様子聞書」と「肥後国熊本世間取沙汰聞書」を中心として加藤時代の熊本城について考察した。絵図を示しながら、建物の配置や道筋を追って城の構造を現在の場所と比較し、本来の熊本城は東向きであったことなど、慶長末期の熊本城と現在の熊本城の相違点を挙げた。
さらに、近世の宇土城の変遷を概観し、絵図に小天守が描かれていなかったことや熊本城の大・小天守閣と石垣の組み合わせについて建造時代の相違を指摘し、慶長一七年六月の宇土城破却令後に加藤時代の宇土城の天守を熊本城の小天守として移築したとして、熊本城への移築についての問題を論じた。