■講演の報告
「治水の神様の系譜
−信玄、清正そして成富兵庫−」
竹林 征三(富士常葉大学教授附属風土工学研究所所長)
・清正の治水技術は、信玄からの継承と共に、「現地をしっかりと見る」に基づく
次に、竹林征三氏(富士常葉大学環境防災学部教授)が、加藤清正についての切り口を、治水技術に重点をおいて講演した。「水を治めるもの、国を治める」といわれるように、歴史に残る武将は治水技術においても優れた才能を示しているとして、武田信玄に始まり、佐々成政、加藤清正、成富兵庫へと続く治水技術の伝承及び関東流の伊奈忠次、紀州流の大畑才蔵、井沢為永の治水哲学について、具体例を挙げた比較をまじえて説明した。
甲府盆地を洪水から守るための最大のシンボルといわれる「信玄堤」、これのルーツとして、中国四川省、岷江(みんこう)の都江堰(とこうえん)であると指摘し、信玄は中国の古典『論語』や『史記』から学んだものとした。又、加藤清正の治水技術が、武田信玄から継承した佐々成政を通じて伝わったとの指摘では、熊本での印象があまり良くない佐々成政に対して、会場内では新鮮な驚きの声が上がっていた。
その後、数々の偉業を成し遂げ熊本の礎を築き、清正公(せいしょこ)さんとよばれ熊本県民の英雄とあがめられている、加藤清正の知恵について「河道付け替え」、「斜堰」、「石刎(いしばね)」、「鼻ぐり井手」、「二重石垣」等の代表例についての治水技術の説明を行った。まとめとして清正の治水技術の根幹は、信玄からの技術の継承と共に、「現地をしっかりと見る」に基づくものであると語った。