■講演の報告


風景は誰のものか−所有権のない公共財−

 加藤 尚武鳥取環境大学 名誉学長


 ◆私的財産の持つ公共性と所有権の絶対性
 加藤氏は、景観法第二条の条文をとりあげ、「非常に美しい条文ではあるが、景観保護に関する手段や歯止め策が盛り込まれていない」と指摘した上で、所有権に対抗できるのかと問題提起。個人の所有権の絶対性を「ゴッホの絵は燃やしてよいか」という事例によって、自分の所有物に対する無条件の処分権が認められるとする立場と、所有権の制限を認めて焼却を禁止できるとする立場の是非両面から考察、「問題は私的財産が公共性を持つことから発生してくる点で、環境保存の問題とも共通する」と語った。また、周囲の景観とは関係なく同一規格によって展開されるチェーン店やコンビニなど、日本のコーポレイト・アイデンテイティの問題点に対して、ドイツの土地利用の仕方に応じたゾーニングを解決策の一例として紹介した。