■講演の報告
「教育と国土づくり−ひとが育つ環境づくり−」
松尾 稔(科学技術交流財団 理事長)
◆ひとが育つための環境づくりこそが教育の根幹
松尾氏は、「“国づくり”は“人づくり”」であるとの持論のもと、昔の原風景の大切さを自身の幼少時の体験を交えて語った。「かつての農村では、子供も貴重な労働力であり、田んぼや山での仕事、家畜の世話などに携わった。手近なところに自然の感動に触れる機会があった」とし、現代社会からそういった感動が失われてしまったことを危惧。「『育てる』のではなく『育つのだ』という認識が重要であり、『ひとが育つための環境づくり』こそが教育の根幹」という考えを展開、その第一歩として「“大人は自分の体験を語れ”」と喚起を促した。また、かつては「技術=道具」であって技術は生きてゆくための手段であったが、あらゆる技術に囲まれている現代は「技術=環境」の時代へ移行していると述べ、「『尊敬される国』であるためには、環境や防災を重視しつつ、風土に考慮した街づくりを行うことが、これからのモデルケースになりうる」と述べた。