■講演の報告


日本の未来と国土形成計画

 森地 茂(政策研究大学院大学教授・(財)運輸政策機構運輸政策研究所所長


 森地氏は、戦後の日本の経済発展の構造を分析し、アジアの動向をふまえた上で、新たな日本型地域発展モデルを模索した。世界の奇跡とも言われた高度経済成長に成功した日本は、90年代に入ると「シナリオの模索時代」に入り、社会資本整備不要論なども論議されたが、「具体的な論点が欠落した状態だった」と指摘。「国土形成計画と社会資本重点計画は車の両輪であり、それをどう生かしていくかということが重要な課題」と述べた。また、地域格差の問題については、「東京一極集中が問題視されているが、むしろ地域ブロック内の格差が開いている状況」であり、「経済がグローバル化する過程の歴史的必然」と述べ、広域圏ごとの地域発展モデルの追求、拠点都市の発展を地域活性化に繋げる方策などが我々の課題であるとした。
 アジア経済圏の動向については、アジア圏でも少子高齢化が進んでいる現状を紹介、水平分業型産業移転が実現したことによる産業投資の国内回帰が起こっており、物流の大きな構造変化が進行していると述べた。それらの現状をふまえ、日本には、国土形成計画づくりとして、圏域構造と制度的枠組みの改変が進められていると述べた。
 最後に、新たな地域発展モデルを事例を交えて紹介し、全国計画と類似レベルの広域地方計画ではない、具体的計画の立案をすべきであると提言した。