■講演の報告


後世に残す風土と国土 −風土工学の視座−

 竹林 征三(富士常葉大学環境防災学部教授・風土工学研究所所長


 竹林氏はまず、日本の公共事業は、「先人の国家百年の大計の智恵の結実」であるとし、後世に残すべきは、国民が安心して暮らすことができ、祖国に誇りが持てる平和と秩序の保たれた国であると主張。完全失業率や自殺者数の増加による現状を危惧し、問題の根本的な原因は、米国から通達される年次改革要望書による、事実上の植民地化であると述べた。年次改革要望書には、大型公共事業の大幅削減要求や、談合に対する排除の要求も盛り込まれていることにも言及した。
 また、災害大国という側面から日本の国土を分析、深刻な渇水状況の事例を紹介し、気象異変と地球温暖化が進んでいることを指摘。利水安全度の向上をはかる観点から、公共事業の必要性を述べた。
 さらに、機能一辺倒で結果がすべてであるという競争社会は、日本の文明を危機にさらし、殺伐たる風土を招くとし、土木業界においても、従来型の土木工学から脱却し、誇りうる国土づくりの実学として「風土工学」の必要性が求められていることを強調した。