社会の多様な要請の中で、地域計画をはじめ公共土木施設・建築物の計画・設計に風土工学デザインを取り入れるという考え方が提唱され、既に数年が経ちます。
 風土工学デザインとは「風土とハーモニーし、風土を活かし、地域を光らす、個性豊かな地域づくりのテクノロジー」と定義づけられています。
 現状を鑑みるに立地地域の歴史的・文化的な風土特性と調和していない各種施設が数多く見られます。このような現状下、“風土”を見つめる感性を育み、その温かき視座で風土をつぶさに調べ、「風土の宝」即ち風土資産を掘り起こし、さらにそれを分析し、手から手へ伝える「職人と匠」の技、すなわち「ものづくりの心」をもって具体の地域計画や施設のデザインに展開させる実学の「風土工学理論」が提唱されてきました。そして風土工学は今、多くの地域住民をはじめ地方自治体や関係機関さらには、民間関係者から既に大きな理解と支持が得られています。
 また地名文化研究をはじめとする風土調査は、地域の由来や成り立ちを正しく認識するうえで不可欠なものであります。風土調査とその展開は、風土工学理論にもとづくソフトデザインの根幹をなすものであり、風土工学ハードデザインとあいまって、相乗的により良い風土形成が促進されます。
 21世紀の社会や地域住民の強い期待に応えるために、それに携わる関係者の研究と自己研鑽、さらにはその普及・啓発の不断の努力と同時に、“地域づくり”“まちづくり”など良好風土形成の活動を支えることが社会的使命といっても過言ではないと言えます。
 “ものづくり”の新しい実学である風土工学が誤認されることなく、美しい構造物、美しい風土を後世にに遺す国土空間創出の推進に貢献するとともに、より広く文化・社会・経済の発展に寄与することを目的として、特定非営利活動法人風土工学デザイン研究所を平成13年4月に設立しました。
 

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