「環境防災」とは何か一これは、「環境」と「防災」という全く関係のない2つの概念をただ並列で並べたものではない。
2つの概念は、互いに密接不可分な関係にあり、互いに補完しあわなければ、健全な体系にならない宿命を背負っている。
災害は最大の環境破壊である。その災害を減らそうとする防災は、環境保全対策の最も重要な根幹をなすものである。したがって、防災を考える時、望まれる環境形成にいかに資するか、という視点が最も重要な目標であらねばならない。
環境とは、人間および人間社会を取り囲む森羅万象すべてである。その環境は、人間にとって最も大切にしなければならない人間に恵みをもたらす表の一面と、実は人間および人間社会が立脚する社会基盤を壊滅的に破壊する大変厳しい災いをもたらす恐ろしい裏の一面の表裏両面で構成されている。
環境問題を論ずる場合、表面ばかりに焦点を当てがちであるが、絶対に忘れてはならない災いをもたらす裏の一面をややともすれば忘れがちであり、表裏両面が適切に評価されていない場合がある。両面を共に同じウエイトで評価しなければ、大きな誤りの結果へと繋がる。
環境防災学として体系付ければ、環境と防災の両面が相互に補完しつつ、一つの大きな体系が構築されることがわかる。環境防災学として論ずれば、見落としがちな両面を必ず適切に、かつ過不足なく論ずることができる。
環境問題が社会的に大きな問題となって久しい。環境に関しては、百家争鳴の感がある。色々な環境論が唱えられてきたが、「災害が最大の環境破壊だ」という論は、これまであまり聞いたことがない。これまでの環境論は、人々に恵みを与える環境論がほとんどであって、人類を滅亡に導かんとする恐ろしい環境破壊である災害については、環境問題とは一切関係ない防災問題として取り扱われてきた。
一方、日本は災害大国であり、毎年全国いずれかの地で大災害が生起している。その都度、災害復旧で国の予備費が切り崩されていっている。災害復旧の基本は、原形復旧であることだが、肝心な復旧後のビジョンについて語られることがない。被災地は全国から色々な支援を受け、ひたすら復興に向けて取り組まねばならぬ長い辛苦の道のりがある。すなわち、防災では、その時々の災いに対し、何らかの夢のあるビジョンが語られることはなかった。
「環境」と「防災」という二つのバラバラな概念は、まるで環境防災という赤い糸でいずれ結ばれることが前世から運命づけられていた、未来のある少年と少女のようなものである。環境防災という赤い糸で結ばれて素晴らしい夫婦となり、立派な子息も誕生して、未来に皆が羨むほどの素晴らしい家庭、すなわち誇りうる豊かな環境の国土が形成されていくこととなる。
2011年6月 竹林征三
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