風土工学へのメッセージ
 
        沢田 敏男 (財)国際高等研究所長

新しい世紀においては、科学技術はますます進展することであろう。それとともに芸術文化の振興がさかんとなり、いわゆる“サイエンス・アンド・アート”の次代を迎えることと考えられる。そして、科学技術的な理性と芸術的な感性との融合による新しい文化の創造ということが重要視されてくるであろう。このことに関連して米国の著名な物理学者ワイスコップは「工業化社会の成熟化した現代社会において、物質汚染と並んで精神汚染が深刻であり、それを制御するためには、学術と芸術を振興し、自己高揚心を高める以外にない」と指摘していることが注目される。・・・本来具備すべき機能のほかに、人々に心地よい感動を与えることができる構造物、つまりは理性と感性を融合させたような文化的工作物を創造するよう心がけることが大切である。

高橋 裕 東京大学名誉教授

21世紀こそ、風土工学に基づく技術哲学に根ざした国土の開発と保全によって、日本人の本来の自然観を呼びさまし、再び美しくも味わいのある日本の国土を再建しようではないか。

中田 栄七郎 長野県 JA南相木理事長

風土工学は自然と人間との過去からの関わり合いを研究し、このことを理解することによって、現在の人間の心の和みに役立たせようという発想であり、今までみなかった人間性のあふれる真実の探求法である。

オギュスタン・ベルク 元宮城大学教授、日仏フランス元学長

風土工学は、日本の国外で知られ、追随されるべきである。なぜなら風土工学は土木工学の思考と実践におけるだけでなく、人間社会と環境とのかかわりにおいても一大転機をもたらすのだからである。

(故)五十嵐 日出夫 北海道大学名誉教授

脱工業社会に突入した今、集団主義から個人主義へ、さらには自己主義へと傾いていく。人々は「経済効率」よりも「好きか・嫌いか」、あるいは「快適・不快」などの「感性的行動基準」、さらには地域の「物理的環境」はもとより「精神的環境」あるいは「文化的環境」にも関心を広げていく。このような変化の中にあって、「風土工学」の体系が創造され、地域・都市計画、交通計画はいうまでもなく、土木施設計画・設計にもこれを広く適用し、その成功例を増やし、さらに同志を集めて
斯学の研究と普及に勢力的な努力が望まれる。

金子 量重 アジア民族造形文化研究所長

「民族造形学」と「風土工学」とは、「地域性」「民族性」「時代性」がその根底をなしているということで共通項があり、その奥には、両者に共通する温かい心の通い、すなわち「精神性」の高さにかかっている点があろう。
明治以降の西洋、戦後のアメリカ一辺倒から自らを解放することが来るべき「21世紀への新しい生き方」につながるのではなかろうか。


中村 和郎 
駒沢大学教授

地理学が風土学を模索している間に、工学では感性工学が誕生し、やがて風土工学へと展開した。これは地理学にとって大きな衝撃であった。風土工学は、学問の諸分野を包括する壮大な総合体系として構築された。地理学が地域の個性記述に終始したのに対して、風土工学では地域づくりが力強く説かれた。なによりも地域の心を捉え、個性化原理が求められる新世紀にふさわしい学問として発展することが期待される。

河野 清 徳島大学名誉教授

風土工学で感銘を強く受けるのは、人間すなわち心を大切にする点です。この風土工学というのは、心をこめて地域のアイデンティティを掘り起こしていて、造られる構造物が心を豊かにし、人々に安らぎを与える。自然や風土と共生できる工学の分野として、大いにこれからの発展が期待される。

服部 真六 中部地名文化研究会会長

ふつう地名研究といえば、地名の由来や変遷や広がり、同じ地名の分布を調べる。だが風土工学は地名文化の研究と同じように、地名の裏に潜む生活や文化や歴史や風土などを掘り起こし、それをもとに考察を深める。だから風土工学のとらえかたは、単なる地名研究より幅が広く奥行きも深いと言える。風土工学という普遍性のある方法論は独創的である。とりわけ風土の情報を数値に表して処理を行い、土木事業の上に実用化をはかるという試みは驚嘆に値する。そこにこそ風土工学の真髄がある。

(故)村松 貞次郎 東京大学名誉教授、元博物館明治村館長

正直申して、芸術だ、デザインだ、と昔から言ってきた建築の方が、機能一点張りの土木よりはるかに先行しているという優越感が、この「風土工学」によって覆されたという、残念な気もしないではない。しかし、それは内輪のつまらぬ感情。土木や建築など、広い意味での風土や環境にかかわる仕事をしている人たちにとって、これはえらく勇気を鼓舞してくれる近来稀な学説だ、と喜びかつ確信して広く江湖に推せんする。

桑子 敏雄 東京工業大学大学院教授

個々の人間の体のローカリティーと、人間の知性が捉える普遍的な概念レベルとを統合するという課題に答えるものとして、「風土」が非常に重要な意味を持ってくるだろうと思う。そこで、身体性と普遍性の統合を具体的な空間再編に活かすものとして、風土工学を志す人は夢窓疎石の言葉をもじって、こんな風に表現できるのではないだろうか。
風土工学を志す人「山川大地、草木国土を自己の本分とするエンジニア」

谷川 健一 日本地名研究所長

「地名を守る会」をつくったのが、川崎に日本地名研究所をつくる3年前、これは全国的に共鳴する方々と連携しながらやった。そのときはもうすでに住居表示法が施工されて18年すぎていた。こういう運動というのはいつも、もう遅すぎるということから始まる、そのことを痛感した。もうちょっと早くやっていればよかったという感じがしたが、遅すぎるというところまでこないと、人間はなかなか気づかない。
 そういうことを感じたが、今回の風土工学の立ち上がりも、たぶん同じような気持ちで竹林先生はおやりになったんじゃないだろうかとおもう。もう遅すぎる、もうちょっと早くこれをやっておけばよかったという思いが、きっと竹林先生の胸の中には去来しているだろうと思うが、しかし、こういうことは遅すぎるというある程度後悔の念を踏まえないとできないことだ。これに限らず、人生のすべてのことが遅すぎるというところから始まっていく。しかし、それは逆に考えると、この風土工学デザイン研究所の設立というのは、日本の現状から見ると、21世紀を見通した早い動きのようにも、私には受け取れる。

岩井 國臣 参議院議員

「風土工学」という新しい工学ジャンルが創造され、この理論を適用することによりこれからの地域づくりに大きく寄与するが期待されている。私の提唱する・・・個性ある地域づくり、共生の思想にもとづく地域づくり、河童の棲む川づくり、巨木の町づくり、怨霊、鬼、妖怪の棲む町づくり・・・これらはとりもなおさず風土工学の課題といったらよかろう。

薗田 稔 京都大学名誉教授、秩父神社宮司

モノ造りを主体とする従来型産業都市の発想は、秩父地域の創造的将来計画には、全くなじまないと、この際はっきり見極めるべきである。
では、どうしたら秩父ならではのマチおこしが可能なのか。どのように考えたら、秩父に住む住人たちが挙がってマチづくりに参加できるような希望に満ちた構想が描けるのか。それには、まず従来の産業開発一点張りの経済構想を捨てて、なによりも住人たちが心身ともに健康で住みやすく自他ともに魅力的な生活社会づくりを目指して、今秩父に残されている地政学的諸条件を最大限に活用することが必要である。そしてそのためには、いまや日本の土木工学で注目されつつある「風土工学」の発想が大切なのである。

千島 茂 大滝村村長

日進月歩、近代科学、技術の枠をあつめ、あらゆる角度から研究し、ダムやトンネル橋梁など道路、治山、治水の工学を論ずる時、山を治め、水を治め、神々の宿るところ。地名の始源。やんごとなきお方の営む都域は古来より山川も麗しく、言霊、国霊がそなわっているものであって、万葉集とか、遍路と巡礼とか、鬼の里とか、併せ考えなければならないところに風土工学の大切さがある。



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